子供の頃。
冬の夜に聞こえていた、電線が風に鳴る音。
電線が、雪混じりの風を切り、笛のような細い音をたてていた。
それを、布団の中で聞いていた。
暗い部屋で、目を閉じて、眠りに落ちるまで。
その音を聞きながら。
外で舞っている雪の渦と。
たくさんの人の影と。
囁き合う姿を想像していた。
昔の実家では、決まった石炭が燃え尽きたら、ストーブごと取り替える方式のルンペンストーブを暖房に使っていた。
夕方、父が帰宅する頃に、ルンペンストーブを取り替える。
それに入っている石炭が燃え尽きる頃までに、夕食と、入浴とを済ませた。
石炭が燃え尽きると、家族は早々に寝床についた。
翌朝に使うルンペンストーブに取り替え。
水道の水を落とし。
凍りつく、寒い夜に備えた。
そして、電線の鳴る音を聞きながら、僕は眠った。
雪に閉ざされた家で。
もう、半世紀も前のことだ。




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