「自分」という、不可思議なもの

日本海 ホルンフェルス 2008年10月中旬のこと

 

秋の日本海。

陽射しがあり、暖かな日だったが、大波が押し寄せていた。

駐車場に車をとめて、ドアを開けると、すぐに潮の匂いがした。


この辺り、電車やバスを乗り継いでは、なかなか行けない。

広い駐車場がある。

自動車で来る人が多いところだ。


岩場を伝って、歩いていける。

波が打ちつける、すぐ側まで近づける。

波の音が大きくなる。


僕は歩いていったが、妻と娘は波からは遠く離れたままだった。

時折僕に向ける視線が、心配そうだった。

僕は少しムキになった感じで足を進めていた。


10月の連休の初日。

出張が多く、なかなか家族で過ごす時間がとれなかった頃。

ドライブで、ちょっと遠出をした。


車の中で、普段あまりできない話を、とりとめもなく続けながら。

そして、たどり着いた、日本海の海岸。

自分がずっと見たかった風景だ。


波打ち際で、振り返った僕を、妻と娘が見つめていた。

不意に、足が震えた。

それでも。


僕は何事もなかったように、二人の元に戻っていった。 



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