夜明け前に、雨の音を聴きながら、ノートを前に考え事をする。
雨の中、うろついた、いろいろな土地を思い出す。
一番遠く、とても寂しかった所で過ごした夜のこと。
雨が窓を打つ音に、波の音が重なった。
冬の入り口の、地中海に面した、人の少ないリゾートホテルの部屋。
一人きり、家族のもとに帰る旅程を、何度も心の中で確かめていた。
これまでの人生で行った、一番西の端。
言葉も、食べ物も、ホテルの中の調度にも慣れていなかった。
クレジットカード1枚と、残り少なくなっていたトラベラーズチェック。
タクシーで空港に着いたときに、英語の表示を見て、少し安心した、
雨上がりの、重たい雲が垂れ込める日だった。




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